Soendenbroe C, Andersen JL, Heisterberg MF, Kjaer M, Mackey AL. Heavy resistance exercise training in older men: A responder and inter-individual variability analysis. PLoS One. 2026;21(1):e0338775. doi: 10.1371/journal.pone.0338775.
【抄録】
重要性:高強度レジスタンストレーニング(HReT)に対する個人間での反応のばらつきや、真の「非レスポンダー」の存在については、これまで統計的な厳密さを欠いたまま議論されてきた。目的:健康な高齢男性において、長期間のHReTに対する反応の変動度を、誤差を考慮した強固な統計モデルを用いて明らかにすること。方法:健康な高齢男性58名(72±5歳)を、週3回のHReTを行う群(EX, n=38)と座位生活を続ける群(SED, n=20)に無作為化した。8週間および16週間の介入前後で、筋力、力発揮率(RFD)、筋肉量(MRIおよび筋生検)を評価した。主要評価項目:最大随意収縮筋力(MVC)、RFD、大腿四頭筋横断面積(qCSA)、タイプ I および II 筋線維横断面積(fCSA)。結果:16週間のEXにより、グループレベルで MVC (19±14%), RFD (58±80%), qCSA (3±4%), タイプ II fCSA (14±25%) が有意に増加した。統計的分析の結果、16週終了時点で参加者の82%が「強固(Robust)」または「極めて優秀(Excellent)」なレスポンダーに分類され、「不良(Poor)」なレスポンダーはわずか5%であった。結論:HReTへの反応には明確な個人差が存在するが、真の非レスポンダーは極めて稀である。HReTは高齢者の筋力・筋量維持のための普遍的な第一選択として推奨される。
【PICO】
P:64歳以上の健康な高齢男性(n=58)
I:週3回、16週間の高強度レジスタンストレーニング(HReT)
C:座位生活を継続する対照群(SED)
O:筋力(MVC, RFD)、筋肥大(MRIによるqCSA、筋生検によるタイプ I/II fCSA)の個人間変動とレスポンダー分類
【要約】
a) 既知:HReTが高齢者の筋力と筋量を増加させることは既知だが、個人間の反応のばらつきが、単なる測定誤差や生物学的変動によるものか、あるいは真の「訓練可能性(trainability)」の差によるものかは不明であった。
b) 付加:非トレーニング対照群の変動から算出された典型誤差(TE)を用いることで、高齢者におけるHReT反応の「真の個人差」を統計的に証明した。また、複数の指標を統合することで、単一の指標では捉えきれない効果を可視化した。
c) 将来への示唆:真の非レスポンダーが極めて稀であるため、今後は「なぜ反応しないか」という個別の原因究明よりも、トレーニングへのアクセス向上や、より広範な集団での最適化に注力すべきである。
d) 方法の要点:1RMの進行状況に基づいて負荷を段階的に増加させる6段階のプログラムを採用。個人間変動の評価には個人反応の標準偏差(SD_IR)を用い、対照群の変動を基準としたレスポンダー分類を行った。
e) 強み:MRIや筋生検という精度の高い測定法を用いている点、および対照群を設定することで統計的に「真の反応」を分離している点。
f) 限界:サンプルサイズが中規模であること、および対象が健康な男性に限定されており、女性や虚弱(フレイル)な高齢者への一般化にはさらなる研究が必要であること。
【ポイント】
・週3回のトレーニングを16週間継続すれば、80%以上の高齢者が明確な筋力・筋量の向上を示す。
・「筋肉が太くならない」場合でも筋力が向上している例が多く、複数の指標で評価すれば「全く効果がない人」はほとんど存在しない(わずか5%)。
・8週時点よりも16週継続した時の方が低反応者の割合が減少するため、高齢者には長期間の継続を促すことが重要である。
・ベースラインの筋力や筋量が低い人ほど相対的な改善率が高くなる傾向があり、高齢になっても筋肉の適応能は維持されている。

